プロジェクト紹介Project
心理的安全性の向上プロジェクト
※この記事は、2022年2月に取材したものです。記事中の内容や社員の所属部署・役職は取材時のものです。
「みんなの100日プロジェクト」(通称100プロ)の一つに、「心理的安全性の向上プロジェクト」があります。近年、チームのパフォーマンスを向上させる方法として「心理的安全性」に注目が集まっていますが、プロジェクトではどのような取り組みを行ったのでしょうか。メンバーの3人に話を聞きました。
- メンバー
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- 人事部人事課 住吉昂太 2015年入社
- 未来事業創造部(静岡経済研究所 出向中) 福村萌 2016年入社 ※取材時は欠席
- 未来事業創造部未来事業創造課 河村泰地 2018年入社
- 鉄道部技術課 渡慶次真愛 2020年入社
Q.「心理的安全性の向上プロジェクト」とは?
住吉 「心理的安全性」とは、ごく簡単にいうと、「地位や経験に関わらず、誰もが率直に意見を言い合える状態」のことです。100プロをスタートする前に行ったアンケートで、「上司が忙しそうで、声をかけていいかどうかためらってしまう」「職場のコミュニケーションが不足しているように感じる」といった心理的安全性に関係する意見が多かったのを受けて、心理的安全性の向上プロジェクトを発足することにしました。
渡慶次「心理的安全性が高い職場」をつくるには、何をいっても大丈夫という「話しやすさ」、困ったときはお互いさまとフォローできる「助け合い」の精神、とりあえずやってみようと思える「挑戦」が可能な環境、人と違ったスキルや能力を持つ人を受け入れられる「新奇歓迎」の風土の4つを満たしていることが大切だと、私たちは考えています。
河村 誤解されがちなのですが、「心理的安全性が高い職場」=「ぬるま湯な職場」ではありません。従業員同士の仲はよいけれど、成果を出すために率直な意見をいい合える、そんな職場を目指すための取り組みなんです。
Q.「心理的安全性の向上プロジェクト」に参加した理由は?
河村 私は、入社後2年間、人事交流で静鉄タクシーに出向していました。3年目に本社に戻ってきたのですが、職場の先輩の名前がわからなかったんですよね。同じ会社の従業員なのに名前すらわからない。その現実にびっくりしたし、なんだかモヤモヤする自分がいました。あのときに自分が感じた不安だったり、葛藤だったりを変えられる方法があるとしたら、それは心理的安全性の向上プロジェクトではないかと思い、参加を決めました。あとは、「会社の仲間のことをもっと知りたい」という気持ちも大きかったです。
渡慶次どの組織にも共通する課題だと思うのですが、1つの組織に立場が異なるグループがあると、意見が分かれてしまいがちですよね。私が所属している鉄道部も、現場で働く人と、本社で働く人がいて、意見が分かれてしまうことがあるんです。そんなときに、現場を経験して本社に移動した私が双方の橋渡しになって、部署内の心理的安全性を高めることができたらと思い、プロジェクトに参加しました。
住吉 私はこの会社には、まだまだ“伸びしろ”があると思っています。その伸びしろをもっと伸ばして、従業員が働きやすい会社にするには、心理的安全性を高めることが大切なのではないかと思い、参加しています。
Q.プロジェクトで具体的に行ったことは?
河村さんの仲間図鑑
住吉 心理的安全性を高めるには、ファーストステップとしてまずはお互いを知ることが必要だということになり、「しずてつ仲間図鑑」を立ち上げました。従業員一人ひとりに社歴、担当業務、経歴、趣味や夢、コメントなどを記入してもらって、それを社内イントラで公開したんです。また、検索機能付きで、趣味や出身校などでつながれるようにしました。
河村 「しずてつ仲間図鑑」は僕のイチオシです。内線をかける前に仲間図鑑で相手のプロフィールを確認して、コミュニケーションのきっかけにしています。また、僕は卓球をやっているんですけど、僕のプロフィールを見たほかの部署の人から「卓球やってるんだね」と声をかけてもらったこともありました。うれしかったですね。
渡慶次「あの人・あの部署・あの事業にちょっと詳しくなれる昼休み」というコンセプトで、「しずてつランチセッション」も実施しました。各部の部長にメインスピーカーをお願いして、その部長が率いている部署がどんな仕事をしているのかを語ってもらうという企画です。特に若い社員は、ほかの部署の部長と話す機会はなかなかないですよね。だからまずは、どんな部署があって、部長がどんな人のなかを知ってもらえたらと思い、はじめました。
住吉 採用チームと連携して、新入社員のプロフィールを社内イントラにアップしたり、その社員の採用に関わった人たちに、新入社員に向けてのメッセージをWEBで寄せ書きしてもらったりという取り組みもしています。この取り組みによって、当社に入ってくれた人が心理的安全性を感じられて、職場になじむきっかけになればと思っています。
河村さんの仲間図鑑
Q.プロジェクトで苦労したことは?
住吉 100プロには「副業解禁プロジェクト」「男性育休プロジェクト」といったプロジェクトもあります。これらのプロジェクトは、成果が数字や具体的な形として表れやすいのですが、心理的安全性の向上プロジェクトはそうじゃありません。だからこそ、「静鉄における『心理的安全性が高い状態』とはどんな状態なのだろうか」「静鉄で心理的安全性を高めるには、どういうステップが必要か」という定義や、必要な取り組みを分解する作業にけっこう時間を使いましたし、その部分がかなり大変でしたね。
河村 心理的安全性って、なんというか、ふわってしているじゃないですか(笑)。しかも、何をもってして心理的安全性が高いと判断するのか、その価値観や評価基準は人によって全然違います。そのせいか、「心理的安全性の向上プロジェクトがやっていることって何か意味あるの?」みたいな声を聞くこともあって、周囲の理解を得ること、プロジェクトの成果を実感してもらうことの難しさを感じました。
渡慶次心理的安全性を高めるには、意見をいいやすい雰囲気をつくることが大切です。ただ、意見をいいやすくなったとしても、意見が分かれたときに、どこで折り合いをつければいいのかという問題が生じますよね。私の場合はまだ入社3年目ということもあって、問題を解決するには至らずに意見を聞くだけで終わってしまう部分もあり、そこはすごく悩ましいですし、力不足を痛感しています。
Q.プロジェクトで社内はどう変わった?
渡慶次「しずてつ仲間図鑑」や「しずてつランチセッション」を通じて、違う部署の方から声をかけられるようになりました。同じような声をほかの人からも聞くので、社内に少しずつ一体感のようなものが生まれているのかなと思います。また、「100プロの心理的安全性の向上プロジェクトって何をやっているの?」と質問していただくことも増えました。「心理的安全性」というものに興味をもってもらうことは、心理的安全性を高めるうえで非常に重要な一歩だと思うんです。だから、自分たちがやってきた取り組みには意味があったんだと実感できて、とてもうれしかったです。
住吉 渡慶次さんのいうように、いろいろな取り組みをするなかで、「心理的安全性」という言葉が社内で認知されるようになったのは、一つの成果といっていいのではないかと思います。
河村 「しずてつ仲間図鑑ができてよかった」という声をけっこう聞きます。従業員がお互いのことを知る、そのきっかけになれたんじゃないかと思います。会社の雰囲気も、少しずつではありますが、よりよい方向に変わっているのかなと感じています。
Q.プロジェクトで自分はどう変わった?
河村 部署が違う人と、同じ目的を持って活動するという経験がこれまでなかったので、とても貴重な経験ができたと思います。部署が違う人と協働してはじめて得られるものがある。それに気づけたのは、自分にとって大きなプラスになりました。
渡慶次河村さんがおっしゃったように、ほかの部署の人と一緒に仕事する機会はなかなかないので、パワポの作り方一つとっても大変勉強になりました。先輩たちの仕事の進め方や姿勢などを吸収して、少しは成長できたのではないかと思っています。また、私は人前で話すのが得意ではないのですが、だからこそ、挑戦してみようと思って、「しずてつランチセッション」の司会役をやらせてもらいました。おかげで、人前で話すことが少しは上達したかなと。ただ、そんな風に苦手な分野に挑戦しようと思えたのは、このチーム内の心理的安全性が高かったからこそだと思っています。
住吉 私は心理的安全性についてはもともと興味があったのですが、このプロジェクトを通じて、理解をより深めることができたと思います。また、まわりの人たちに心理的安全性を感じてもらえるように、より意識して発言したり、行動したりするようになりました。
Q.これから“静鉄”をどんな会社にしていきたい?
住吉 今回の100プロでは、心理的安全性を高める第一歩として、従業員同士がお互いを知る機会を設けました。この部分は、一定の成果を出せたのかなと思っています。ただ、心理的安全性は、お互いを知って仲よくなればそれで終わりというわけではありません。お互いを知って仲よくなることで、一人ひとりがより自分の意見を率直にいえたり、挑戦できたりする土壌が醸成されて、その結果、仕事の生産性やアウトプットが高まる。それが、心理的安全性が目指すところです。まだそのフェーズには到達していないので、今後も継続して、心理的安全性を高める取り組みを続けていければと考えています。
渡慶次私は年次が浅いこともあって、業務でわからないことがいっぱいあります。でも、周囲の人が忙しそうにしていると、「私のせいで仕事を中断させてしまったら申し訳ない」という気持ちが先立って、なかなか聞けなかったりするんです。もちろん、そうやって相手の状況を慮ることも大切だと思うのですが、いざというときには、「忙しそうだけど聞いちゃえ」と行動できる環境のほうが、仕事もしやすくなるし、従業員同士の関係も良好になると思うんです。「困ったら誰に聞いても大丈夫」。みんながそう思える会社を目指したいです。
河村 心理的安全性の向上に取り組んでいる企業をたたえる「心理的安全性アワード2022」という祭典があります。当社はその祭典で、県内唯一・鉄道業界で唯一受賞することができたのですが、最高賞を受賞したある企業が、「心理的安全性を高めた結果、損益計算書に好影響が出た」と説明していたんです。誰もが意見をいいやすくなり、挑戦できる環境があれば、生産性が高まり、会社もきっと変わるはず。道のりは長くても、一歩一歩、そのステージに近づいていければと思っています。
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